DJのための音楽理論 第3回「調について」

皆様、ついにこの話題に触れる時がやってまいりました!どうもおわたにです。DJのための音楽理論、第3回は「調」について。いやーやっとここまで来ましたね。。今まで音や音程について見てきましたが、今回はそれらを活用しつつ楽曲のムードを成す最大の要因の一つである調――キーと言ったほうが馴染み深いかも知れませんが――について解説していきます。

 

しかし、実は調について解説する前に知っておかなければならないことがあります。それは「音階」についてです。今回のテーマである調は、実は楽典では「音階」の章の一部に当たる部分で、それ単体で章が書かれているわけではありません。しかしDJにとっては調は非常に重要です。なので今回のメインテーマは調ですが、その前段階たる音階についてもきっちり触れて参ります。

もはや張る必要もないかもしれませんが、鍵盤楽器がお手元にない方向けにブラウザ上で音を出せるピアノのリンクを。実際に音を出して読むのを推奨します。

life.a.la9.jp

 

 さて、まず音階とはいったい何なのか。

音階とは、ある音をスタートポイント(これを主音と呼びます)として、1オクターブ上の同じ音に達するまで、特定の秩序にしたがって音を並べたものです。

 前回の音程の話で、ある音とその1オクターブ上の音は何度になったか、覚えていますでしょうか?そう、完全8度でしたね。よって、スタートポイントとなる音―主音とその1オクターブ上の音までは8個の音が存在するはずです。しかしその中には、完全系の音程と長短系の音程が存在し、長短系の場合2つの音程が存在しました。その長短どちらの音を用いるかで音階は変わってきますし、そもそも音を抜いた、つまり8個音がない音階も存在するのですが……今回は最も重要な、長音階短音階の2つを解説します。

 

長音階は簡単です。Cを主音とするなら、C・D・E・F・G・A・B・C、つまり鍵盤の白鍵をそのままなぞるだけ。この音階の各音同士は、下から長2度(CD間)・長2度(DE間)・短2度(EF間)・長2度(FG間)・長2度(GA間)・長2度(AB間)・短2度(BC間)となるように並んでおり、一番下を決めてこの関係に沿って音を並べれば長音階の出来上がりです。

では、試しにGを主音として長音階を作ってみましょうか。最初の音はG、次は長2度なのでA、次も長2度なのでB、次は短2度なのでC、次は長2度なのでD、次も長2度なのでE、次も長2度なのでF#、最後は短2度なのでG。あら簡単。鍵盤を活用しつつ好きな音で長音階を作ってみたりしましょう。

 

前回「長」は明るいイメージを指すと書きましたが、長音階を聞いていても、やはり明るいイメージを感じ取ることが出来るのではないかと思います。逆に、短音階はやはりどこか物悲しげです。

短音階の場合、Cを主音とするなら、C・D・E♭・F・G・A♭・B♭・C、となり、長音階の時と比べてE・A・Bに♭がついて半音下がっています。これでそれぞれ長3度・長6度・長7度だったものが短3度・6度・7度になっていることが分かるでしょう。この音階の各音同士は、下から長2度(CD間)・短2度(DE♭間)・長2度(E♭F間)・長2度(FG間)・短2度(GA♭間)・長2度(A♭B♭間)・長2度(B♭C間)となっており、やはり長音階の時とは様相が異なっています。こちらでは別の主音で配列することはしませんが、是非ご自身でもやってみてください。

(ちなみに、短音階の場合はその中にも種類があって、上で示した短音階は最も基本的な「自然的短音階」と呼ばれるものです。作曲などで音階が用いられる場合、主音の短2度下に必ず導音と呼ばれる音を音階の中に置かなければならない(長音階の場合長7度の音が導音として機能します)のですが、自然的短音階には導音はありません。上記で言うB♭は短7度であり、Cとの音程は長2度だからです。そこで、短音階における導音を設置するためのソリューションとして、「和声的短音階」「旋律的短音階」といった短音階が存在します。和声的短音階の場合、(以下、Cを主音とした場合で書きますが)EとAに♭が付いていて、Bはそのままです。弾いてもらえるとわかると思うのですが、この場合A♭とBがかけ離れている(この2つは半音3つ分違う増2度という音程です)ように感じられます。そこでさらにA♭からも♭を取り除き、増2度をなくしたのが旋律的短音階です。ここでは♭が付いている音はEのみで、それ以外は長音階と何ら変わりがありません。ここから、長短の性質を決定づけるのは実は第3音(Cを主音とするならE)であることがわかります。)

 

……さて、音階の話はこんな感じですか。すでに2000文字近くも書いていますが、今回の本番はここから。調のお話です。

 

調とは、楽曲の根底にどの音があり、その楽曲が明るいか明るくないかを示す表示です。長音階短音階が特定の音を主音として成り立っているとき、そこには特定の調ができる、といいます。つまり主音は音階の根底にある重要な音であり、主音の音名と音階の名称が組み合わされて、調の名称=調名とされるわけですね。そして、長音階の調は長調(Major)、短音階の調は短調(minor)と名付けられます。

例えばDを主音とする長音階の調はD-Major、簡略化してD。短音階の調ならばD-minor、こちらを簡略化するとDmとなります。DJソフトでは簡略化した書き方の方を多用しますので、書き方を覚えておきましょう。

 

長調短調が各音にあり、更に第1回より音は12個あることから、調の個数は基本的に24個です。そしてその中で、前回解説した音程のように関係性を持つ調同士というのが存在します。ある調に対して特別な関係性を持つ調のことをその調の近親調と呼び、その関係性には「同主調」「平行調」「属調」「下属調」の4つがあります。この4つの調と主調同士は相性が良く、mashupやDJにおいて用いることが出来る重要な知識なんですね。では、それぞれを簡単に見て行きましょう。

 

同主調は、なんとなく見て察しが付く方もいらっしゃるかもしれませんが主音が同じ長調短調の組み合わせを指します。例えばDとDm、GとGmとか。mashupだとhugkissさんがたまにこの組み合わせを用いています。mashupで同主調を用いるのは結構珍しいかも。

続いて平行調。これは音階で用いられる7つの音が全て同じな長調短調の組み合わせです。この長調短調の主音同士は短3度違っていて(長調の方が高い)、例えばFとDm、E♭とCmなどがこれにあたります。実際にこれらの音階を弾くと出てくる音が同じなのが分かると思いますが、平行調の曲同士でつないだりmashupを制作すると綺麗に合います。

次は属調についてです。ある調の属音(音階における5つ目の音のことです)を主音とする調のうち、元の調が長調であれば長調短調であれば短調を、主調に対する属調と呼びます。例えばCmの属調Gm、Dの属調はA、といった感じ。前の2つは調同士の組み合わせですが、属調は任意の調に対応して決まります。

最後は下属調。さっきが属音だとすればこちらは下属音(音階における4つ目の音のことです。主音に対して5つ下の音なので"下"属音なのです)を主音とする、元の調と同じ長短の調を主調に対する下属調と呼びます。例えばGの下属調はC、Fmの下属調はB♭mという風に。以上4つ、是非弾きながら確認してみてください。

 

これらの近親調を選曲段階で活かしていくと、よりスムースに曲をつないでいくことが可能になります。筆者はまだまだなので頑張ります……

で、その関係を非常にわかりやすく示しているのが「五度圏」という図です。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/3/33/Circle_of_fifths_deluxe_4.svg/600px-Circle_of_fifths_deluxe_4.svg.png

横同士のつながりは属調/下属調、縦は平行調ですね。なんと見やすいことか。図はWikipedia上に掲載されていたJust plain Bill氏のものをお借りしました。

基本的には今かけている曲のキーから別の曲に繋ぐ際、このキャメロットサークルの上下左右隣のキーの楽曲(勿論同じキーの楽曲でも)を選曲すると、より2曲が繋がって聴こえやすい。というのが今回のお話でした。しかしそのためには、自分が今どのキーの曲をかけているのかがわかっていなくてはなりません。そしてその近くにはどんなキーがあって、それに当てはまる曲は手持ちにあるのか。そんなことも頭に入っている必要があります。こればっかりは意識して聴いていくしかありません。DJソフトのキー解析もあることにはあるのですが、それも正確とは限りません(そんな時に自分の耳で聴いて修正できるように、この解説を書いてきたという面もあります)。とにかく聴いていくことです。そのために、これまで音についてや音程について、音階や調についてを学んできたわけですからね。

 

とまあ、「調について」はこんなところでしょうか。少し投げっぱなしな感も否めませんが、ここまでなるべく平易な言葉で材料を用意したつもりです。あとはどれだけそれを自分の耳に定着させていけるかだと思います。勿論この記述に不足がないのかと言うとそんなことは全くないと思いますし、分かり辛い部分、伝わり辛い部分もあるでしょう。皆様からのご質問お待ちしております。