辞典(時折更新)

おかざきよしともさんのパクリです。面白いから読んだほうが良い。

ystmokzk.hatenablog.jp

 安直だけどやってみたいものはやってみたいので。(2019.3.4~)(最新の更新:2019.10.15「機材」「パイオニア」「水」)

 

【あ】

アイカツ!

このブログのタイトルにも堂々と載っているこのワードにはいろいろな意味がある。狭い意味で言えばバンダイによって2012年秋から2016年春まで展開されていたデータカードダス、つまりアーケードカードゲームであり、同時にそれを原案として同じ時期に放映されていたテレビ東京系列のTVアニメを指す。また同作をはじめとして現在(この項は2019年3月4日に書かれた)の「アイカツフレンズ!」まで(途中に2作目となる「アイカツスターズ!」をはさんで)続くアイカツシリーズを総合的に指すワードでもあり、全ての作品で共通して用いられる「アイドル活動」を指す用語であり、広ーーーーい意味で言えば、概念。色んなものごとが収束する地点である。「○○はアイカツ」みたいな。

じゃあ筆者であるおわたにが今思うアイカツとは何かというと、「実家」。今はアニメの「アイカツフレンズ!」は視聴していないしデータカードダスもプレイしていなければ楽曲もちゃんと追っているわけではないが、「アイカツ!」~「アイカツスターズ!」と(足掛け3年半ほど?)追ってきて、つまり筐体に100円玉を突っ込みアニメを観て色んな楽曲を聴きまくりイベントにも参加し同人誌もいっぱい買った身としては、やっぱり大事な場所である。ダンスミュージックにもう一度はまってDJをやり出すきっかけとなったし、今でも同人誌の即売会には足を運ぶ。あれがなければ今の自分はあり得ない、という意味で、アイカツ!は実家である。

余談ではあるが、COALTAR OF THE DEEPERSNARASAKI氏が最初のオープニングテーマやその他にも数々の楽曲を書き下ろしている(他にもクラムボンのミトさんなど著名な作曲家が多数参加している)ことからアイカツ!のフアンにはバンドマンやDJなど音楽をやっている人間が多く、先日の芸カ(アイカツ!オンリーの同人即売会。これはこれで別個に書きたい)でも某数少女風アレンジ音源が出たぐらいだ。アイカツ!が好きで知り合った人がバンドや音楽の趣味も似通っていた、なんてことは少なくないし、その逆も然り。こういうところも筆者がアイカツ!を好きであるひとつの要因だったりする。

 

アイドルマスター

今やアイドルをテーマにしたアニメやゲームは本当に沢山あるが(無論アイカツ!もその一つである)、ここまで大きなジャンルとなったきっかけは間違いなくナムコからリリースされ現在まで続くこの作品なのではないだろうか。

アイカツ!のフアンとしてはやはりアイドルマスターバンナムの先輩と言うべき作品であり、作曲家が被る(田中秀和さんや石濱翔さんをはじめとするMONACAの皆さんやミトさん、あとはアイカツ!にはrmxでの参加だけどTaku Inoue氏とか?)こともしばしばあるため、そこまでのめり込んでこそいないがCDとかはちょくちょく買って聴いたりしている。筆者にとってこの2作品は微妙な距離感であり、例えるなら……ART-SCHOOLTHE NOVEMBERSみたいな関係性か?いや全然違うか……

当たり前だが歴史が長い分良い曲が多い。

 

■愛ゆえの決断

これに関しては一度でいいからサントラ収録のフル尺版を聴いて欲しいんだ……(号泣)

 

【き】

■機材

オタクな音楽好きのテンションを最も上げてくれる二つの漢字、それが「機」と「材」である。多分。筆者も中学の頃9mm Parabellum Bulletにハマって残響レコード周りのバンドたちを聴くようになって、それはもう、あまりにも、「機材」というものに憧れるようになりました。ゼロ年代後半からテン年代前半という時期はとにかくバンドマンの機材、特に足元が面白かった時期だと勝手に思っていて(主観なので怒らないでください)……ハンドメイド/ブティックのエフェクターとか、ケーブルとか、ボードの組み込みとか、それはもう見ごたえがありました。勿論今もそうなんだと思うけれど。筆者としてはここ数年はDJを始めたことなどとシンクして機材といってもDJ機材を見たりするのがとにかく楽しい時期に入ってきている。でも結局大好きなのはなんにも変わってないですね。その割にはそんな沢山揃えているわけではないし綺麗にボード組み込みとかしてるわけでは一切ないのが、我ながらなんなの?という感じではあるが……まあ、憧れてるぐらいがいいのかもしれません。決して安くないしね!

 

【せ】

関谷あさみ

大好きな作家さん。一般で描いても百合を描いても成人向け(多分これが一番有名か?)を描いても面白い。凄い。女の子がとにかく可愛く、何度氏の描かれる女の子になりたいと思ったことか……

これは「つぼみ」の項にも書いたが氏は一時期同誌に読み切り百合作品をいくつか連載(?)していて、氏の作品を読んだのはそれが初めてだったけれど、女の子の描き方や繊細な感情の描写に「この人は覚えておいた方が良さそうだ」と強く思わされた。当時の自分、ナイス。また同作中で登場人物の女の子がSyrup16gを聴いている描写があり、それで気になったことがシロップを聴き始めるようになったきっかけである。丁度同時期に五十嵐の復活もあったが、筆者としてはシロップに出会えたのは関谷あさみ先生のおかげであると大声で言っていきたいところ。あの子が何(どのアルバム、という訊き方をしたみたいですが)を聴いていたのか気になりすぎてご本人にリプしてしまったこともある。以下はその返答。

IDは、その、気にしないでください。

 

【つ】

■つぼみ

きっと多くの人が女優さんを思い浮かべることだろうと思う。がしかし筆者にとっては、いの一番に同名の百合アンソロジーのことを思い起こさせる。玄鉄絢先生が「星川銀座四丁目」(名作!)を連載し関谷あさみ先生が単行本未収録の読み切りを数本載せていた、といえば解る人には解る……のか?高校生のころブックオフの100円棚にあったつぼみを回収するというのをやっていたが「星川銀座~」の単行本を揃えたこともあり今では多分全て手放してしまった。今度関谷あさみ先生目当てでまた集め直そうかしら……

余談だが6号の表紙がCDを聴いている女の子2人のイラストで、そこまでは普通なのだがそのイラストのなかにELLEGARDEN「ELEVEN FIRE CRACKERS」にACIDMAN「green chord」が描き込まれているというとんでもないセレクトだったことを思い出した。当時気付いたときめちゃめちゃ嬉しかったな……あとこれは何回も言ってるんだけど関谷あさみ先生の掲載作の中にSyrup16gが出てきて、それがきっかけで聴くようになったんだよな。そういう文化のクロスオーバーが筆者は大好きです。

 

【と】

■遠き空へ

(号泣)

 

【は】

■パイオニア

文字通りの辞書的な説明はここでは控えるとして……(辞典とは……?)……DJにとっては、テクニクスと並ぶDJ機材の"パイオニア"そのものだろう。現在では(カーナビの製造で有名な)パイオニアとPioneer DJは別の企業となっており、しかしながらDJ機材の修理はパイオニア本体がセンターを設けているというマジでややこしい事態となっている。なので本当ならばDJ機材メーカーとしてのパイオニアの話をするのであればきちんと「Pioneer DJ」と表記しなければならないのだが……特に理由はなくパイオニアを項の名前にします。あ、あとlainの製作なんかにもパイオニアのLD事業部門が携わってたみたいですね。

で、Pioneer DJといえばCDJ。そのCDJが開発された経緯やその後のrekordboxなんかへつながる歴史が下のインタビューに出ていて非常に面白いので張っておきます。僕は50回は読みました。

www.rakuten.ne.jp

余談ですが、先日「交渉人 真下正義」を観ていたら家電量販店の売り場が写るシーンでパイオニアのテレビが売っていて時代を感じました。KURO、ケーズデンキで売ってるの見て子供ながら(2007年発売なので当時10歳とかそこら)に憧れてたんですけどね。

 

【ふ】

ブックオフ

青春。横浜の中高一貫校に電車を3本乗り継いで通っていた筆者の通学ルート上には計7店舗のブックオフが存在し(ちなみに今の通学ルートには9店舗ある)、PCもスマホも何より金もない音楽好きにとっては500円/280円(少し前までは250円だった)のCDアルバムの棚にかじりついて未だ見ぬ名作を探し求め、ワイド判のコミックス棚もついでに物色するのが高校の頃の日課だった。もちろん今ではなるべく新品で買うが……TSUTAYAも徐々にCDのレンタルを縮小させつつある中、ブックオフには学生の音楽ファンのホームでいてほしい。

 

【ほ】

■僕

「僕」の場合は佐藤友哉。ひらがなの「ぼく」なら西尾維新(というか戯言シリーズ)。主にこの2人のおかげで、日本語において最もポピュラーな一人称のひとつであるにもかかわらず、文章で使うのには妙な気恥しさというか気負いというか……どうしても構えてしまう。気にしなければいいだけの話では、あるのだけど。まあ実際話し言葉では普通になんでも使うし。

というかこういうのって他にもあったりするのだろうか……少なくとも筆者がぱっと浮かべることができるのは「ワタシ」は菊地成孔っぽいなあとかそんなぐらいだ。「おれ」ってひらがなで書くと文学っぽいですよね。

そういえば、今のところ1人しか見たことはないが、バイトで一人称が「僕」の女の子に出くわしたことがある。本当に実在するんだーと一瞬感動すらしたが慣れてしまえばなんてことはなかったし、残念ながらと言うべきか特段デカい感情を抱くこともなかった。

 

【み】

■水

世界で一番美味しい飲み物。水があれば何でもできるからね!

J-POP Xfile ~これまで見つけた"踊れる"J-POPについて書いてみる

あけましておめでとうございます、おわたにです。とうとう2020年代という新たなディケイドに突入しましたが皆様いかがお過ごしでしょうか。
さて、今回は以前から書こう書こうと思いつつなかなか手が出せなかったテーマである「踊れるJ-POP」について書いてみたいと思います。手が出せなかったというのは単純に自分の気分の問題とか自信を持って書けるほどしっかりとDIGをしているのかといった部分とか、まあいろいろあったのですが、先日急に「そろそろ書いてみてもいいのかもな」という心持ちになってきましたため、やってみることにしました。

もう今でこそあまり見かけなくなりましたが、特にゼロ年代のJ-POPのシングルには3~4曲目あたりに表題曲のRemixが収録されていることがしばしば見かけられ、国内/海外問わず多くのプロデューサーたちが素晴らしいRemixを残してきました。しかし、そういった情報はなかなか残りづらく、筆者自身ブックオフや誰かのツイートなどで知ることが殆どでした。是非このブログをきっかけに、まだ見ぬ名曲との出会いが一つでもあれば嬉しい限りです。
で、今回は「踊れるJ-POP」を「DJユースなJ-POP原曲」と「J-POPのブートではないRemix」の二種類として、それらを織り交ぜながら全6曲を紹介していきたいと思います。基本的にはレア盤に該当するものは紹介せず(というかそもそも知らない)、中古や配信などでも比較的手に入りやすい楽曲を選んでいる……はずです。手に入りやすさや販路についても個別の楽曲紹介で触れてまいりますので、ブックオフディスクユニオンに出向く際の参考にしていただければと思います。
それでは、最後までどうぞよろしくお願いいたします!

 

YUKI「JOY -Eric Kupper Club Mix-」

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まずはこれでしょう。2005年リリース、ex.JUDY AND MARYという前置きすら不要なほどのビッグネームとなったYUKIの9枚目のシングル。3rdアルバム「joy」の先行シングルであるこの楽曲は、「関ジャム 完全燃SHOW」へのゲスト出演や「アイカツスターズ!」への曲提供でもお馴染みの蔦谷好位置のペンによるもので、蔦谷氏にとってもプロデューサーとしての転機となった楽曲でした。

で、そもそもが素晴らしいこの楽曲を極上のディープハウスに仕上げたのが、USディープハウスの重鎮・Eric Kupper。氏はハウスミュージックの祖として名高いFrankie Knucklesと長年に渡り活動を共にし、制作面でのサポートを行ってきました。その中で1992年にFrankie Knucklesと共同制作した「Whistle Song」が世界中でビッグヒットを記録し、その後多くのアーティストの楽曲制作やRemixに携わることになります。

揺れのかかったエレピが終始引っ張っていくトラックにYUKIのヴォーカルが映えるこの楽曲は、J-POPのRemixとしてはトップクラスにクラブヒットした楽曲の一つといっても過言ではないはずです。というのも、この「JOY」のシングル盤3曲目に収録されているEric KupperのRemixと2曲目に収録されているMunityによるRemixがNYの名門ハウスレーベルKing Streetからアナログでリリースされ、多くのDJがプレイするということが起きたのでした。SwingroovesのClothed Music氏もその影響をこう語る。

というほどで、実際筆者もここぞという時にかけたくなる、シンプルなハウスだからこその魅力がこの楽曲には詰まっています。

先ほども書きましたがこの「JOY -Eric Kupper Club Mix-」はJOYのシングル盤(レコファンブックオフで100円で買える。というか買った)に収録されていて、比較的入手は容易……なはずです。また配信サービスも、先に掲載したGoogle Play Musicだけではなく、moraレコチョクなど各サービスで購入することが可能になっています。ハウスなんだけどポップスな楽曲をお探しのDJは必聴!

 

w-inds.「THE SYSTEM OF ALIVE」

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続いての楽曲は先程の「J-POPのブートではないRemix」から打って変わって「DJユースなJ-POP原曲」ということで、3人組ダンス&ヴォーカルユニット・w-inds.の2002年にリリースされた2ndアルバムから、その表題曲を取り上げてみたいと思います。

w-inds.は2000年から活動を開始し、現在に至るまで大きな活動休止やメンバーの脱退などは特になく活動をコンスタントに継続している実は結構珍しいグループなのですが、2017年の「We Don't Need To Anymore」など、ヴォーカル・橘慶太のセルフプロデュースによるハイクオリティな楽曲とパフォーマンスで近年では音楽好きからも熱い注目を集めていることは記憶に新しいと思います。しかしこの流れは決して近年だけの話ではなく、彼らは"J-POPの文脈の中でR&Bやダンスミュージックを基調としたサウンドを展開する"という軸をデビュー当初からその中心に据えていました。そして、今回ご紹介するこの「THE SYSTEM OF ALIVE」は、まさにその軸が非常に美しい形で結実した楽曲の一つだと筆者は考えています。

この楽曲のサウンドは一聴すればわかる通りUKガラージ――特に2stepど真ん中なわけですが、まずは日本での2stepについて簡単におさらいしたいと思います。2stepの母体というべきUKガラージは90年代末にクラブシーンに登場し、2000年にはヒット曲が多数出てくる一方でそれ以降はグライムやダブステップへと発展する中でUKガラージ自体は一旦下火に……という風になっていったわけですが(かなりざっくりなので怒らないでください)、あくまでこれは海外での流れで、日本においてはテイ・トウワMONDO GROSSOこと大沢伸一(氏は2stepコンピの選曲・監修を手掛けたこともありました)、m-floの☆Taku Takahashiといったアーティストたちがそのサウンドを積極的に取り入れ、2000年から2003年ごろのJ-POPのヒット曲にはしばしば2stepが見られる……なんてことが起こるようになりました。最近だとm-flo「come again」が平成の名曲特集みたいな番組で取り上げられたり、大沢伸一によるMONDO GROSSOの最大のヒット曲である「LIFE feat. bird」がリリースから19年を経て再びANAのCM曲として起用されたり(一応LIFE自体は2stepではないのですがシングル盤の4曲目に2stepなRemixが収録されておりこちらも最高です。あと2000年のリリース当初もANAのCMソングでした)といった感じで、UKガラージの再評価の機運なども手伝って今でも当時のサウンドを耳にすることがあるのではないかと思います(本当にざっくりなので本当にすみませんとしか言いようがないのですが)。

ちょっと前置きが長すぎましたが、「THE SYSTEM OF ALIVE」の話に戻ります。最初に書いた通りこの楽曲が収録された同名のアルバムは2002年リリースで、やはり先ほど書いた日本における2stepの流行とシンクロしています(一応これ以外の収録曲には2step要素は全然ないのですが)。作編曲はこのアルバムで約半数の楽曲を書かれたHiroaki Hayama氏が手掛けており、これはあくまで筆者の見立てというかほぼ邪推ですが、「アルバムの表題曲」というシングル曲ほどではないものの少し重要なポジションにこの楽曲が当てられていることについて、「2stepが国内で徐々に浸透しつつあるこの段階」だからこその配置なのではないかとどうしても考えてしまいますね。実際後発なだけあって、完成度の高いなかなかナイスな2stepサウンドをJ-POPに落とし込んでいる佳曲と言えるでしょう。J-POP×2stepな良い曲をお探しなDJは必聴です。筆者もついついかけてしまう一曲。

入手に関しては最初に提示したGoogle Play Musicに加え、こちらもmoraレコチョクでも取り扱いありますね。なんとこちらはAmazonのPrime Musicでも聴けます。CD盤もおそらくかなりの数が中古で出ているはずですが悪名高いCCCDなんで気にする人は気を付けてください。

 

唐沢美帆「Refrain」

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先程のw-inds.に引き続き、こちらの楽曲もDJユースなJ-POP原曲、それも2stepを連続してのご紹介です。近年ではTRUE名義で「響け!ユーフォニアム」や「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」などのアニソンを歌唱している唐沢美帆の、2004年にリリースされた2ndアルバム「ID.」からのナンバー。元々彼女はMISIA「つつみ込むように…」の作詞作曲を手掛けた島野聡のプロデュースにより2000年にデビューし(TRUE名義での活動は2014年〜)、やはり彼女もR&Bを基調とした音楽性を展開していました。唐沢美帆名義で残したオリジナルアルバムは2枚と少なめなのですが、シングル盤に収録のRemixにはあのKAGAMIを招聘していたりとダンスミュージック・オリエンテッドな面も随所に見せていたアーティストだったのでした。

先ほど日本での2stepを取り入れたアーティストとしてテイ・トウワの名前をあげましたが、何を隠そうこの「Refrain」のアレンジメントを手掛けたのがテイ・トウワその人であり(作曲は島野聡)、実はこの「ID.」は豪華な作家陣を招いているアルバムだったりもします。2stepではないですがアルバム後半に収録されているディープハウスナンバー「2AM」は作詞が菊地成孔で作編曲はテイ・トウワという力の入れようで、筆者はtofubeats資生堂のwebラジオ・花椿アワーで「2AM」をかけているのを聴いてぶっ飛んだのがこのアルバムを知ったきっかけであったりします。「ID.」は基本的にはR&Bのアルバムなのですが、こうしたハウスや2stepがいい感じに散りばめられているなかなかの名盤でありますので知らなかったという各位は是非チェックしてみるといいのではないでしょうか。

販路についてはこちらもGoogle Play Music、またレコチョクmoraでも配信の取り扱いありますね。CD盤は廃盤になっているうえ中古でもあまり見かけないので根気が必要になってくる感じです……ちなみに「2AM」は先日リリースされたテイ・トウワの外仕事コンパイルアルバム「Arbeit」にも収録。宇多田ヒカル「First Love」を手掛けたGoh Hotoda氏のマスタリングによる盤なので音に関してはかなり期待できそうですね。tofubeats「水星」もリマスター収録されているようで気になっています。

 

東京スカパラダイスオーケストラ「美しく燃える森 (FPM Bootleg House Mix)」

sp-m.mu-mo.net

続いては「J-POPのブートではないRemix」……ではなく、「J-POPの公式ブートリミックス」というちょっとねじれた立ち位置の一曲をご紹介します。奥田民生のヴォーカルによる言わずと知れたスカパラの大大大名曲ですね。そして、先に謝っておきますがその名曲具合とは裏腹に本記事の中でトップクラスに入手がめんどくさい音源です。最初に張り付けてあるリンクがミュウモという時点でお察しになった鋭い読者の方もいらっしゃったかもしれませんが……すみません!とはいえメチャクチャDJにとっては重宝する一曲なので、ぜひ紹介させてください。

「美しく燃える森」は2002年2月にシングルリリースされ、今でこそスカパラの代名詞となった「外部からヴォーカリストを招き、自分たちの楽曲にフィーチャーする」歌モノですが、このシングルはその最初のチャレンジとして制作された"歌モノ三部作"の第三弾という位置づけでした。その前の二枚ではORIGINAL LOVE田島貴男、当時THEE MICHELLE GUN ELEPHANT在籍中のチバユウスケを招聘するという凄まじい人選を見せつけていたわけですが(そしていずれも名曲!)、これらの3曲を含むアルバム「Stompin' On DOWN BEAT ALLEY」は初のオリコン一位を獲得するなど、この「美しく燃える森」とその前後のアルバム・シングルはスカパラの歩みの中でも特に重要な時期となったわけです。

で、同じく2002年には「美しく燃える森」のFPM(Fantastic Plastic Machine)によるRemixが制作され、アナログレコードでも発売されたわけですが……ここからがこの楽曲のめんどくさい部分。まず、美しく燃える森のFPMによるRemixは二種類が存在し、BPM早めのラテンなリズムを前面に押し出した「~ (FPM Latin Fire Remix)」と、原曲の良さを活かしたままハウスビートに乗せたこの「~ (FPM Bootleg House Mix)」が制作されまして、アナログレコードにもこの二曲が収録されていました。が、このRemix、そもそもデジタルでの入手がほぼ不可能なんです。レコチョクやmoraは両方とも取り扱いなし、Google Play MusicにはBootleg House Mixが一応あるにはあるのですが、FPMによるミックス盤からの配信でフルの尺ではない形になってしまっています。そしてここからが恐ろしいことに、CD盤にミックス等ではない形で収録されている(ことが確認できる)Remixは、Latin Fire RemixがFPMの外仕事ベストアルバム「Motions」に収録されている(ことが確認できる)のみです。一応この時期のPVを収めたDVD「DOWN BEAT SELECTOR」に特典としてRemix音源収録のボーナスCDが付属と銘打ってはいるのですが、恐ろしいことにどのRemixなのかはwebには明記されておらず(発売元のavexのページにすら。ですよ)、discogsで見る以外Bootleg House Mixの収録されているCDについての情報収集が不可能という、嗚呼なんとめんどくさいことか!!!!!という状態になってしまっているのです。勿論「DOWN BEAT SELECTOR」にはどちらも収録されていますので、ご安心を。ただし中古はブックオフなどで見たことは今のところ一回しかありません。(実はこの記事をリリースすることにした当日にふらっと立ち寄った辻堂のブックオフで500円で見かけるという何とも言えないミラクルに遭遇しました……それまでは本当にゼロだったんです!)

ほぼ愚痴になってしまいましたが、肝心な入手について……実は筆者は先に張り付けてあるミュウモでこの音源を入手したわけではなく、普通に中古のCCCD盤をamazonで購入しているので(そしてそもそもミュウモなんて使ったこともないので)、ミュウモで購入する方は自己責任でお願いします。買えなくても筆者は責任が取れません……

と、ここまで入手の大変さについてひたすら書いてしまったのですが、何度も書くようですが「美しく燃える森 (FPM Bootleg House Mix)」、超アンセミックな日本語歌モノハウスとしては最高峰と言って良いほどぶち上がれること間違いなしのキラーチューンです。入手の大変さを加味しても間違いなくおすすめできる一曲ですので、収録されている「DOWN BEAT SELECTOR」ぜひぜひお探しになってみてはいかがでしょうか。ここまで書いたのでどれを探せばいいかとかわかりやすくなってると思いますので……本当に……はい…………

 

SMAP「ダイナマイト (MJ COLE REMIX)」

……はい。とうとう試聴の貼り付けが配信サイトですらなくなってしまいました。それもそのはず、次にご紹介するこの「ダイナマイト (MJ COLE REMIX)」は本当に配信がされていない(少なくとも筆者は確認できませんでした)楽曲だからです。とはいえ、先にご紹介した「美しく燃える森」ほど入手がめんどくさいというわけでは、実はありません。理由はちゃんと後述します。

一応この試聴で載せているのは筆者がDJ練習会の時にプレイしたMIXの録音で、3曲目(4:00ごろ~)に「ダイナマイト (MJ COLE REMIX)」をプレイしています。そのほかに選曲しているのもどれも良い曲ばかりなので、ぜひ聴いてみてくださいね……という宣伝はさておき楽曲自体の話なのですが、このとんでもないRemixは2005年夏にリリースされたSMAPの16枚目のアルバム「SAMPLE BANG!」、その2枚目の既発曲のRemixを収録したディスク「KAIZOKU BANG!」2曲目に収録されているトラックです。ちなみに全部で3枚あり、あと一枚のタイトルは「HIGH BANG!」(こちらはメンバーのソロ楽曲を収録)という、ディスクの数も言葉遊びも徹底して規格外なアルバムになっています。

SMAPと言えば昔から海外の超一流ミュージシャンをレコーディングに招いたり、最近のリリースでも中田ヤスタカ相対性理論に曲を書かせたり赤い公園津野米咲を作詞曲に招いてその編曲を菅野よう子が行ったかと思えばそのシングルのカップリングでは凛として時雨のTKを呼んであまりにも"そのもの"な楽曲(こちらの編曲は元電気グルーヴCMJK)を書かせたりととんでもない人選で音楽ファンを震え上がらせるトップアイドルという恐ろしい一面を持っていたわけですが、それはRemixにおいても決して例外ではなく、このアルバムより後年でもtofubeats椎名林檎のペンによる「華麗なる逆襲」をRemixしており、やはりカッティングエッジです。

この「ダイナマイト」自体はJ-POP史に残る至高のハウスチューンであるFolder「パラシューター」を手掛けた小森田実(コモリタミノルとも表記されます)による名曲であり、この二曲はどちらも97年リリースで四つ打ちという切っても切れない関係性にあります。そしてこの名曲を大胆にRemixしたのが、2stepブームの中心人物・MJ Coleです。その大胆さたるや、少なくとも筆者の耳には使われている原曲の素材は声のみ、尺で言えばおそらく全部合わせても30秒未満に聞こえ、それでもあまりにもカッコいいので全部ヨシ!という、最高のガラージに仕上がっています。ここまで自分の色に染め上げるMJ ColeもMJ Coleですけど、それをそのままリリースするSMAPサイドもSMAPサイドですよ。ものすごい勇気というか、自信というか、色んなものを感じます。筆者は本当にこの曲好きすぎてことあるごとにDJでかけてしまいます、というか一生かけるんだと思います……その位好きです。もうここまで書いといてなんですが、何を言っても野暮なのでとりあえず聴いていただきたいです。是非。

(ちなみにこのRemix盤には4曲が収録されており、この「ダイナマイト」の次はまさかのBOOM BOOM SATELLITESによる「SHAKE」という……もう本当に、凄すぎます。こちらも是非聴いていただきたい。)

で、入手についてなのですが、先ほども書いた通りこのRemix盤は配信がされておらずを買うほかありません。しかしそこは流石の国民的グループ、ブックオフに行けばかなりの確率で盤質のよい個体を目にすることができます。運が良ければ500円でも手に入りますし、なんならアルバム本編の盤質はボロボロだけどRemixの方は手がついていないのか美品という100円のものもハードオフで見たことがあります。是非運試し感覚で探されてみてはいかがでしょうか。

 

RIP SLYME「楽園ベイベー -STUDIO APARTMENT Remix-」

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早いものでもう6曲目、最後を飾って頂くのはJ-POP屈指の夏の名曲の一つ、楽園ベイベーのSTUDIO APARTMENTによるRemixです。

楽園ベイベーは2002年に発売されたRIP SLYMEの5枚目のシングル。このRemixは2008年にテレビ朝日の音楽番組「VERSUS」内で制作/配信リリースされ(ジャケット画像にも番組のマークが入っています)、その後2015年のシングル「ピース/この道を行こう/ナイショデオネガイシマス」(最初に張り付けてあるGoogle Play Musicはそれです)に収録され、CD盤でも入手が可能になりました。

Remixを手掛けたのは花澤香菜さん「ほほ笑みモード」を手掛けたことでもおなじみ、日本のハウスシーンを牽引する2人組ハウスユニット・STUDIO APARTMENTで、ゆったりチルアウトな原曲から彼らの個性が出まくったアッパーなハウスに様変わりしています。彼らはゼロ年代に流行した「乙女ハウス」(ざっくり言うとラテンハウス/ソウルフルハウス/クラブジャズ/ディープハウス辺りを混ぜて歌モノポップス風味を足した感じ……わかってる人に絶対に怒られたくない!)のムーヴメントの最中にいたアーティストでしたが、その彼らがこういったヒップホップを出自に持つアーティストのRemixを手掛けるというのはなかなか興味深い事例に見えますし、その一方で歌モノ要素強めのハウスを得意とするスタアパにとって「楽園ベイベー」という楽曲はこれ以上ないくらい魅力的な素材であったことが容易に推測できます。夏という季節とハウスミュージックは相性がいいので……例えばMONDO GROSSO「LIFE feat. bird」とか、SMAP「BANG! BANG! バカンス」(この曲も小森田実によるものです)とか、アイカツ!フォトonステージ!!「GLAMOUROUS BLUE」とか。音楽と季節についてはそれだけで一生考え続けられそうなテーマですが、このRemixはそういう意味でも示唆に富んでいる気がしますね。

少し脱線しましたが、販路についてしっかり書いておきましょう。CDでのリリースについては先述した通りですが、配信は番組でのリリースがされたものと冒頭で提示したCDと同内容のものが混在しており、ちょっと迷う感じになってますが筆者はというと普通に新品でCD盤買ってしまったので両方の配信の音の違いとかに関しては分かりかねるんですよね……すみません。どなたか聴き比べを行った方がいらっしゃいましたら是非どんな感じか教えてください。

 

 

……とまあなんとも締まらない感じになってしまいましたが、全6曲の紹介を終えたいと思います。長々とした文章ですがここまでお読みいただきありがとうございました。

これ以外にも、知り合いが見つけた某サンバの某大物によるRemixとか(実は正式にお誘いして寄稿してもらおうか迷ったりしました)、マツコ・デラックスが大好きな某曲のRemixとか、いろいろ書きたい曲はないわけではないので、今後第二弾だったりやってみてもいいかなあとは思っています。まあそれよりも続きをちゃんと書けるように、まずは何よりも筆者自身これからもdigをしっかりやっていかねばなと今回の記事執筆を通じて気を引き締め直すばかりです。

最後にいつもの通りではございますが、誤字・脱字・情報ミスやリンクミス、ここの記述が足りてねえんだよバカ!などのご指摘などございましたらTwitter(@o_w_t_n)までどうぞ。今回名前を出させて頂いたすべてのアーティストの皆様に多大なる敬意を表して、またすべての楽曲に愛を込めて、この記事の〆とさせて頂きます。お疲れ様でした!

 

Prime Musicはこれを聴け!2 ~続・Amazonプライム会員なら無料で聴ける個人的名盤6選

まさかこんなに伸びるとは思いませんでした、おわたにです。こんなことあるんですね。前回の記事の大ヒットから早1か月、まだまだPrime Musicにはイケてるアルバムがいっぱいだったので書くことにしました。前回と全く変わらないテンションのまま、前回よりもちょっとだけダンスミュージック要素を増やしてお届けいたします。

あと前回の記事の前置きで書くべきことは殆ど書いてしまったのでここでは省略します。もし読んでない人いらっしゃいましたら是非。

o-w-t-n.hatenablog.com

それでは、最後までよろしくお願いします!

 

①パソコン音楽クラブ「DREAM WALK」

第2弾の一発目は、前回の記事にお寄せいただいたコメントでも名前が挙げられていたパソコン音楽クラブからスタートしてみたいと思います。趣味バレてますね……"わかり"のある方に記事をお読みいただけるのは嬉しいことなのですが。

で、パソコン音楽クラブ(よくパ音と略されますので本稿でも以降はパ音と書いていきたいと思います)。彼らは2015年に結成された大阪出身のトラックメイカーユニットで、柴田氏(変な動きをしたりストロングゼロを飲んだり、鍵盤を弾いていたりする方)・西山氏(眼鏡をかけていてPioneer DJのエフェクターをいじったりしている方)を中心として代表のらくたむ氏・いくつかの楽曲でヴォーカルを担当するまほちゃんなどの複数のメンバーで構成されています(が、ライヴなどで表に出たり、主に楽曲制作をしているのは柴田氏と西山氏の二人)。そして、何よりその名の通り部活という名目で活動しています。公式ホームページによる紹介がこちら。

"DTMの新時代が到来する!"をテーマに
ローランドSCシリーズやヤマハMUシリーズなど
90年代の音源モジュール/デジタルシンセサイザーを用いて
気軽に楽しく音楽をつくろうという部活です。
寛容な心を持った部員募集中!! 

ローランドSCシリーズといえばレイ・ハラカミ氏の使用で有名なSC-88Pro(通称ハチプロ)などが代表的機種として挙げられそうですが、"ハチプロからこの音が?!"という驚くべきサウンドクリエイションでオーディエンスを魅了したレイ・ハラカミ氏とは対照的に、パ音の使い方には"ハチプロのままの音で行く"というところにその面白さがあります。一見ペナペナなサウンドであっても、使い方次第で今の機材にはない面白さが見いだせたり、創作の原動力になったりする――インタビューにおいて、彼らはそんな風に語っています。

natalie.mu

実際彼らの音楽は、懐かしさを感じるニューウェイビーなサウンドでありながらも確かに"今"のポップス/ダンスミュージックとして成立しており、またソングライティングやトラックメイキングのクオリティの高さ(パ音結成以前にそれぞれのメンバーにバンドの経験があったりギターの心得があったりすることも背景に挙げられますが)も相まった、決してコンセプト先行になりすぎない誠実さがオーディエンスの心を惹きつけてやみません。

作品としてはこれまでにMaltine RecordsからEP「PARK CITY」、自身のbandcampからアルバム「SHE IS A」を両方ともフリーで2017年にリリース、またその後二枚の全国流通アルバムをリリースしています(後述)。またtofubeatssora tob sakanaなどの多数のrmxに加えCMやドラマ音楽を手掛けることもあり、マルチネからのEPリリースのすぐ後となる2017年7月、ラフォーレ原宿の夏のバーゲン「ラフォーレグランバザール」のCMに大抜擢され、界隈がメチャクチャざわつくなどの実績を着々と積み上げていたのですが……そんな中、満を持して2018年6月に発表された初の全国流通盤、それがこの「DREAM WALK」でした。

このアルバムは初の全国流通版ということもあり、以前から彼らのsoundcloudセッション動画で発表されていた楽曲のリメイク(という表現が正確なのかはわかりませんが)と新曲群を織り交ぜた、まさに名刺代わりとなる全8曲が収められています。中でもアルバムのハイライトとなる「Inner Blue」はパソコン音楽クラブの持ち味とポップセンスが存分に発揮された名曲で、2018年夏のアンセムといっても何ら過言ではありませんでした。今聴いても間違いなく良い曲ですね。翌年の春M3でリリースされた同曲のVIPにあたる「Inner Blue (Pasocom 4×4 Remix)」もナイス四つ打ちで最高です。気を抜くとDJで毎回かけてしまうぐらい好き。物販でしか売ってないみたいですが……

その後、「DREAM WALK」のリリースでさらなる注目を浴びたパ音は、今年―2019年9月、全国流通CDとしては2枚目となるアルバム「Night Flow」をリリースしました。この2ndはPrimeにはないですし1stの紹介である以上詳しくは触れませんが、夜をテーマとした同作にはトラックメイカーとしてもソングライターとしても大幅に進化した彼らの現在が詰まっており、文句なしの大名盤となっています。筆者は「Night Flow」は間違いなく今年のベストアルバムだと思っており、このまま書くと分量が倍になってしまうので控えますが、WWWでのリリパも最高でしたし今度の「Night Flow Remixes」リリパ(なんと代官山UNIT)もチケット取りました。マジ今のパ音ヤバいんでCD買った方がいいですよ。というわけで今後ますます注目が集まるパソコン音楽クラブ、必聴!

(と書いていたらなんと今日の夕方にテレビ東京系列のアニメポケットモンスター」のEDテーマ「ポケモンしりとり(ピカチュウ→ミュウVer.)」をパソコン音楽クラブが書き下ろすという大事件が起きました。本当に輝かしい異常事態です。というかこの件で当記事のリリースを大幅に早める決断を筆者は下したわけですが、何にせよこれでまた一つ、これからパソコン音楽クラブが来るということが立証されてしまいました。ヤバいですね。本当におめでとうございます!!!!!12.8代官山UNITみんな行こうな!!!!!!!!!!)

 

②Sweet William「Blue」

これも名盤ですねー。名古屋出身のビートメイカー・Sweet William。2017年に沖縄出身のラッパー・唾奇とタッグを組んで制作したアルバム「Jasmine」(こちらも名盤!)が各所で話題となり、m-floなどのビッグネームのrmxを手掛けるなどその存在感を増すSWですが、そんな彼が2017年の冬にリリースした単独名義でのEPがこの「Blue」。名盤と一般的に言うのであればJasmineだろ、という向きもあるとは思うのですが、最初に氏の作品を聴いたのがこちらだったこともあったり、またダブルネームとは違ったソロならではの彼の"色"がよく出ている気がして、筆者はこのEPを推していきたいところなんですよね。あと、この作品はCDが数量限定だったのもあってもう入手困難だったりもするので、そういった意味でもここで紹介させていただく意味がある作品なのかなと思います。

Sweet William氏の音は、サンプリング(ある楽曲のフレーズをそのまま借用し、加工したりしなかったりして自分の曲にそのまま取り込むという手法)を軸としたオーセンティックなヒップホップの良さを持ちながらも、自ら組み立てる鍵盤やベースラインなどの「弾き」の部分とのバランス感覚が絶妙に共存しています。また基本的にすっきりとした音数で、一聴すると非常におしゃれで聴きやすいのですが、よく聴いてみると特徴的なベースラインであったり独特なリズムであったりという部分に作曲家としての自己が確立されているところが氏の凄さであり、「SWのビートは外さない」とヘッズからは絶大な信頼を寄せられています。

「Jasmine」のヒット以降、唾奇氏と各地のイベントやフェスに引っ張りだことなったSW氏ですが、今作「Blue」では今年待望のアルバムをリリースしたkiki vivi lily女史(この記事を書いている最中にトラックメイカーSUKISHA氏とのコラボアルバム、また同作にtofubeats氏がrmx参加することが発表されメチャクチャびっくりしてしまいました。すげー楽しみ)、またSW氏とは同じクルー「PITCH ODD MANSION」に所属するANPYO氏など、彼の作品にたびたび参加する気心の知れたゲストを迎えての制作となっています。もちろん唾奇氏も参加しており、今作での「Just thing」は、渋谷でのゲリラライブでも一曲目に披露されるなどライブでも鉄板になっている名曲なのですが……本当にどの曲も良いんですよ、「Blue」。フルレングスのアルバムではない、EPならではの密度というか……前回のKID FRESINOもそうなのですが、フルアルバムにはフルアルバムの、EPにはEPの良さがあって、特にこの作品なんかはEPならではのサイズ感がハマっていて素敵だな~と思うのです。また、CD盤には4曲のバックトラックも入っており、そちらは配信だと「Blue Instrumentals」としてまとまっているのですが、こちらもPrime Musicで聴くことができます。トラックだけで聴いてみると今まで気付かなかった音が聞こえたり、また違った風に響くように感じられるかもしれません。こういうところもヒップホップというジャンルならではの面白さなのではないでしょうか。

今回挙げた3作品のみならず、Sweet William氏の作品は殆どがPrime Musicで聴くことができ、Jinmenusagi氏とのコラボアルバム「la blanka」、また青葉市子さんと制作された楽曲「からかひ」など、どれも素晴らしい作品ばかりです。筆者は本当に本当にSweet William氏の作品と音が大好きなので、これを読んでくださる皆様がSW氏の音にハマることを願うばかりです……というわけで必聴!

 

藤井隆「light showers」

最近では「おげんさんといっしょ」への出演などで音楽ファンからの熱視線を集める藤井隆さん。同番組や紅白でも披露されたヒット曲「ナンダカンダ」など、歌手としての知名度も確かな氏ですが、今回はそんな彼が2017年9月にリリースしたアルバム「light showers」を取り上げてみたいと思います。

そもそも、2017年の氏は7月にそれまでのヒット曲を大胆に再構築したrmxアルバム「RE:WIND」をリリースし、同作にはtofubeats氏やPARKGOLF氏も参加するほか先述の「ナンダカンダ」はまさかまさかのHyperJuice(彼らについてはこちらの弊ブログ最初の記事でも言及しています)がrmx。原曲のポップさはそのままにHyperJuiceらしい完全フロア対応の超ゴキゲンなBasslineに仕上がっており、踊れるJ-POPの新しいアンセムとしてharaさんご出演のアイカツアニON(2018.3.24、新木場ageHa)をはじめとする多くの現場でプレイされました。というようにインターネット音楽のファンやDJをも射程に捉えた活動で注目されていたのですが、そんな中リリースされた今作もまた、非常にネットなどで話題を集めることとなります。そのきっかけが、アルバム発売に先駆けて公開されたこの映像でした。

藤井隆 "light showers" CFまとめ」と題された2分46秒のこの映像には、10本の懐かしい90年代CM――ではなく、90年代のCMの映像が収められています。しかもご丁寧なことに最初のCMが始まる前には何かの番組の提供クレジット、最後のCMのあとにはニュース番組の冒頭(時刻は夜の11時56分)がそれぞれ挿入されており、本当にTVを見ているような気分を想起させる工夫に満ち満ちた、リアリティーと質感にとことんこだわった映像作品になっています。こちらのインタビューではこの映像の制作に至る経緯や様々な試行錯誤を垣間見ることができるのですが、各CMのキャッチコピーや小道具など、とにかく細部まで作り込まれたプロダクションは非常に秀逸であり、そしてこの10本のCMで起用されている楽曲は、総て本作「light showers」の収録曲です。

もうお解りでしょう。藤井隆氏は、自身のニューアルバムのすべての収録曲に架空のタイアップを設定し、それらに忠実に沿った架空のCMを10本制作したのです。筆者は昔のCMを見るのが好きでたまにやるのですが、この映像とアイデアにはものすごく興奮したのを覚えています。勿論、それは当然、筆者だけではなかった。リリースから2年が経過した今でも、この映像の完成度の高さと熱量には圧倒されます。またこのアイデアの裏側にvaporwave的なムーヴメントへの目配せがあったのかどうかは正直に言えば微妙ではありますが、先述したパソコン音楽クラブがラフォーレグランバザールのCMに起用された2017年と同じ年にこの映像が出たことを考えると、ただの偶然として片付けるにはあまりにも惜しい。筆者はそう考えています。(……というか、2017年の下半期というのはアイカツアニONにHyperJuice・haraさんやYunomiさんなどのインターネット系アーティストがご出演なさるのが発表された時期でもあり、筆者がそれを承けて当ブログ初めての記事を書こうと決めたのも2017年内でした。やはり今考えても藤井氏の2017年の活動はすさまじいものがあります)

さて、肝心のアルバムの内容ですが、本作ではプロデュースと全曲の編曲をNONA REEVESなどでもプロデューサーを務める冨田謙氏が手掛け(また2曲で作曲も担当)、作詞作曲にはそのNONA REEVESから西寺郷太さん、堂島孝平さん、意外なところではスカートの澤部渡さんなど、まさに実力派と言うべきソングライターたちが集結しています。テーマは"90年代の音楽"ということでジャンル自体はデジロック風であったりシティポップ的であったりと様々なのですが、総じて丁寧に作り込まれており、音質面的にも決して90年代の回顧に終わらない、上質なポップアルバムとなっています。

そして、この中でも筆者が特に推したいのが、8曲目の「カサノバとエンジェル」です。作詞曲を西寺郷太氏が担当したこの楽曲は一点メディカルの目薬「クールサイラス」のCM曲に起用されており、M1のオルガンベースが全編で鳴り響くハウスチューンなのですが、個人的にはYUKI「JOY -Eric Kupper Club Mix-」やSMAP「ダイナマイト (MJ Cole remix)」と並ぶ日本の歌ものディープハウスの名曲だと思っています。もちろん他の楽曲もめちゃくちゃ良いのですが、これは特にイケてますね。というわけで必聴!

 

④VaVa「VVORLD」

今回、第2弾を執筆するにあたって「(前回は割と年代に幅があったため)なるべく新しい作品を紹介する」「(前回はバンドものが多かったため)ヒップホップやダンスミュージックを多めに紹介する」という裏テーマを設定していたのですが、まさにその両方を満たす名盤、あったんです。あのPUNPEEやSIMI LABを擁する国内最重要ヒップホップレーベルの一つであるSummitから今年(2019年)2月にリリースされた、ビートメイカー/ラッパー・VaVaの2ndフルアルバム。それが「VVORLD」(読みは"ワールド")。まさかこれが聴けるとは思いませんでしたよ。筆者は出て即、普通にCDで買っていたのでPrime Musicにあることは完全ノーマークだったのですが、今年この作品、めちゃくちゃ聴きました。

VaVa氏は2012年からビートメイカーとしての活動を開始し、自身の所属するクリエイティブチーム"Creative Drug Store"周辺のラッパー――BIMやin-d、また彼らが結成したユニットTHE OTOGIBANASHI'Sなどにビートを提供していましたが、チームでの共同生活へのストレスから2015年ごろに一旦CDSからは離れ、これをきっかけに自身のラッパーとしての顔を徐々に見せ始めます。2017年7月には1st「low mind boi」(これもPrimeで聴けるナイスなアルバムです)をリリースし、またCDS界隈とも再び繋がりを持つようになったことからBIM氏のソロアルバム「The Beam」の収録曲「Bonita」をプロデュースしたり、前回も紹介したKID FRESINOのアルバム「ài qíng」ではラストの「Retarded」のビートを提供するなど、ビートメイカーとしても「脂の乗った」時期に突入し始めたのです。

本作「VVORLD」はかなり多めの16曲が収録されており、アルバムの新曲は10曲で、残り6曲は前年(2018年)にリリースした3枚のEP「Virtual」「Idiot」、「Universe」(←これだけなぜかPrimeでは聴けない)からの収録です。この3作品はかなりハイペースな連続リリースでしたがどの楽曲も非常にハイクオリティで、オーディエンスの期待もどんどんと高まる中でのアルバムリリースとなったことから氏のクリエイティヴィティの高さが伺えます。実際先述した「Bonita」や「Retarded」もリリースは2018年で(厳密にいえばBonitaのMV公開は2017年内なのですが)、この「low mind boi」以降の約1年の間に大きな心境の変化が訪れたことをVaVa氏はインタビューでも語っています

そして肝心のサウンド面ですが、VaVa氏の音は基本的にはトラップを下敷きにしつつもホーンサンプルなどを効果的に配置することで独特のポップさというか、親しみやすさを感じさせています。自身のラップでもオートチューンを活用し、常に"歌って"いるところにラッパーとしての個性が光るわけですが、そんな彼が同じくオートチューンを駆使するtofubeats氏を客演に招いた「Virtual Luv」の名曲具合は凄まじいことになっています(VaVa氏がビートを作り始めるきっかけの一つはtofubeats氏による映像シリーズ「HARD-OFF BEATS」であり、のちに同シリーズに招かれるというなかなかの良い話も)。また、「つよがりのゆくえ」のように内面を吐露するような等身大な楽曲も増え、やはりそういった面でも親しみやすさというところにつながっているように感じます。

VaVa氏は本作リリース後もin-d「On My Way」Red Bullのキュレートによるマイクリレー楽曲制作企画「RASEN」の第2弾(参加アーティストはDaichi Yamamoto/釈迦坊主/dodo/Tohji ……敬称略、どんな豪華さなんだ)へビートを提供していたり、またそのDaichi Yamamoto氏のアルバム「Andless」へ客演で参加していたりととにかく八面六臂の活躍を続けていらっしゃるのですが……個人的には早く花澤香菜さんのアルバムに参加してほしいですそれはともかく歌ものとしての強度すら感じさせる本作、ヒップホップのファンのみならず幅広く聴かれてほしい名盤です。というわけで必聴!

 

⑤「TREKKIE TRAX THE BEST 2016-2017」

「それ、アリなの?!」と叫んだ皆さん、すみません笑 でもこれ、すごく重要な名盤だと筆者は思っています。2012年に発足し、東京を拠点に数々のイケてる若手アーティストの作品を世に問うてきたレーベル・TREKKIE TRAX。同レーベルが2016年から17年に発表した作品の中から厳選した17曲をコンパイルし、さらにボーナストラックとして収録曲のrmx2曲を追加した形で2018年にリリースされた2枚目のベストアルバムを今回は取り上げてみたいと思います。

創始者のひとりであるCarpainter氏についてはこちらの弊ブログ最初の記事でも取り上げましたが、氏の作品ではグライムMC・Onjuicy氏を迎え制作されたインターネットミュージック界隈のアンセム「PAM!!!」、また2ndアルバム「Returning」からタイトルトラックを収録。また先述したパソコン音楽クラブとも親交の深い京都出身・ヴォーカルカットアップの巨匠in the blue shirt氏、TREKKIEが生んだスターのひとりであるMasayoshi Iimori氏のトラックや、さらにはメジャーデビューも果たしたchelmico三毛猫ホームレスprodによる代表曲「Love is Over」と同曲のTomggg(読みは"とむぐぐ")氏によるrmx、猫の飼い主としても鬼バズるDubscribe氏やアニメ「プリパラ」の公式rmx盤への参加で界隈をざわつかせたblacklolita氏のトラックも収録するなど、いちレーベルのベストという枠をはるかに超えたコンピとしての充実度の高さが伺えます。

聴いてみるとわかりますが、今挙げただけでもグライム・フューチャーベース・トラップ・ヒップホップ・ダブステップなどの非常に多様な音楽性を違和感なく一枚の作品に落とし込んでおり(実際は彼らの内包する音楽性はさらに幅広いわけですが)、このような沢山のアーティストのリリース、またイベントの開催・出演(TREKKIEの創始者4人―CarpainterことTaimei氏、その兄Seimei氏、andrew氏、futatsuki氏はTREKKIE TAX CREWとしてユニットとしてのDJやトラックメイクもこなしています)を通じて、TREKKIEは新しい"東京シーン"の形成に尽力してきました。Carpainter氏を取り上げたインターネットミュージックの記事も、ともすればインターネット発のベースミュージックというシーン自体も、彼らがいなければ全く違ったものになっていたでしょう。筆者はそこがTREKKIE TRAXの凄さなのだと感じています。

Carpainter氏はつい先日(11月13日)3枚目のフルアルバム「Future Legacy」をリリースし、同作は今年2月に発表された「Declare Victory」(こちらはPrimeで聴けます。カッコいい)からの流れを汲むテクノ/レイヴトラックスをパッチパチに詰め込んだ大大大傑作でしたが、こうした近年のレイヴリバイバルな流れも国内においてはTREKKIEや国士無双、monolith slipといったアーティストたちが切り拓いてきた部分が大きいと筆者は認識しています(これも非常にざっくりではありますが)。まずはこのコンピレーション、また各アーティストの音源から、非常に広範にわたるインターネット発のダンスミュージックを履修し始めてみてはいかがでしょうか。というわけで必聴!

 

岡村靖幸「幸福」

さて、Prime Musicで聴ける個人的名盤を取り上げるシリーズ第2弾のこの記事もいよいよ最後の作品の紹介となりました。ラストを飾るのは、日本が誇る天才・岡村靖幸氏の2016年作「幸福」です。

テン年代岡村靖幸氏の活動は非常に旺盛で、二枚のリアレンジアルバム「エチケット」をリリースしたり、アニメ「スペース☆ダンディ」のOPテーマ「ビバナミダ」の書き下ろし・映画「みんな!エスパーだよ!」の主題歌「ラブメッセージ」の書き下ろしとそれぞれの楽曲のシングルリリースをしたり、はたまたBase Ball Bearのミニアルバム「初恋」収録曲「君はノンフィクション」への編曲・プロデュース参加、またそのBase Ball BearからVo/Gt小出祐介を作詞とヴォーカルに招いてのダブルネームでのシングル「愛はおしゃれじゃない」をリリースするなど、リアレンジアルバム・新曲リリース(タイアップも二つ)・プロデュースやコラボ・そしてたくさんのライブやTV出演と多岐にわたっていました。

勿論本作リリース後もdaoko氏とのコラボレーション「ステップアップLOVE」リリースとそれに伴うMステ出演、また花澤香菜さんへの楽曲提供などというオタクの悪い妄想そのものとしか言えない大事件(残念ながら作曲のみで編曲はプロデュースを担当した佐橋佳幸氏が行ったものでしたが、編曲を岡村ちゃんにやらせないなんてどういう思考回路なんだ……????しかし作詞はなんとあの大貫妙子さん)が起こるなど、やはり精力的な活動を展開していますが、このアルバムはそんな氏の精力的なテン年代を一枚のアルバムへと結実させたような、充実した内容になっています。

岡村靖幸といえば、"和製プリンス"の異名を持つことからもわかるような、ファンクネスとポップネスの濃厚な蜜月が想起されます。しかし先述したテン年代のリリース、例えば「ビバナミダ」や「愛はおしゃれじゃない」は基本的に四つ打ちのリズムが強力に聴き手を引っ張っており、それは「新時代思想」など本作のアルバム曲においても同様です。この強力な四つ打ちのリズム構造とそれらに決して負けない鮮烈な上モノ、というスタイルは「ステップアップLOVE」でも登場――というか輪をかけて熾烈なアレンジメントになっており、「今の岡村ちゃんの音」のトレードマーク的であるとすら言えます。

またラストの「ぶーしゃかLOOP」は2011年にオフィシャルサイト上で発表された楽曲のリアレンジ的な立ち位置のヴァージョンで、一応ライブでの編曲に近いもののほぼ別物として生まれ変わっており、この濃厚なアルバムのラストを締めくくるに相応しい四つ打ちナンバーになっています。とにかく最後まで踊らせ切る。それがこのアルバムの凄いところであり、同時にテン年代岡村靖幸氏の凄味でもある。筆者はスペース☆ダンディで「ビバナミダ」を聴くまでは殆ど氏の楽曲を聴いたことがなかったのですが(まあ筆者が本格的に音楽を聴き始めた2010年、彼は塀の中にいたので当然と言えば当然なのですが)、氏の音の一度耳にするとどんどん次が聴きたくなる中毒性のあるサウンドメイキングは時代を超えて音楽ファンを熱狂させ続けています。というわけで色々な音楽ファンにとって"他人事じゃない"本作、必聴!

 

 

というわけで「Prime Musicはこれを聴け!2」、今回は10000字近いボリュームでお届けいたしましたが……どうでしょう。正直今回は年代的に新しめの作品を多めに紹介したこともあって、これから更に来るというアーティストも多く紹介しているため願わくば前回よりもたくさんの方に読んでほしい内容になってます。そのためにいろいろなインタビューを読み返したり、音源聴き返したり、自分にとっても楽しい執筆になりました。そしてとにかく今回(前回もですが)紹介させて頂いたアーティストの皆様へ多大な敬意を表して、この記事の〆とさせていただきます。

またいつもの通り、誤字・脱字・情報ミスやリンクミス、ここの記述が足りてねえんだよバカ!などのご指摘などございましたらTwitter(@o_w_t_n)までどうぞ。最後まで長々とお読み頂きありがとうございました。お疲れ様でした!

Prime Musicはこれを聴け!Amazonプライム会員なら無料で聴ける個人的名盤6選

 これまた長いタイトルを失礼いたします。おわたにです。さて皆さん、Amazonプライム、活用してますか?会費の値上げがありつつも大変有用性が高いことでおなじみのAmazonプライム、配送が無料になったり映画やドラマやM-1グランプリを観られたりといろいろなサービスが受けられることは多くの人がご存じかと思いますが、その中でも今回はAmazonが展開するサブスクリプション音楽配信サービス・Prime Musicに焦点を当ててみたいと思います。

Amazonが展開するサブスクリプション音楽配信サービス……というとUnlimited Musicの方を思い浮かべる方が多いかもしれませんし、Primeの方は単なるUnlimitedの下位互換じゃないの?と思われる方も少なくないと思います。というか間違いなくそうなのですが、とはいえ、Prime Music、決してバカになりません。勿論一つのサービスとして成り立っている以上当たり前っちゃあ当たり前なのですが、使ってみると「えっ、あれ聴けるの?!」「あのアルバムも?!」「あのアーティスト殆ど聴けるじゃん!」ということが多く、後述しますが現在ではフィジカルが入手困難になっているアルバムも存在しています。そんなデータベースに無料でアクセスできるとあらば、使わずにほっぽっておくのはやはりもったいないですよね。この記事をきっかけに今まで全く注目していなかったという方が少しでも……というのは方便!今回はPrime Musicにかこつけて単に好きなアルバムについて書きたいだけの記事ですAmazonプライムステマなどでは断じてない。何ならタイトルだって「Prime Musicにあって感動したアルバム6枚」でいいんです。よく考えたらなんでこんな仰々しいタイトルにしたんだ……?まあいいや!というわけで見ていきましょう。

 

 Flipper’s Guitar「CAMELA TALK

このアルバムが名盤であることに疑いを持つ人はおそらく少ないでしょう。1990年リリース、小沢健二小山田圭吾による、日本ポップス史にあまりにも大きな影響をもたらしたユニットの2ndアルバム、その2006年リマスタード版(エンジニアはSyrup16gコーネリアスでおなじみ高山徹さん)がPrime Musicで聴けると知った時の衝撃たるや!日本人ならマジで全員一度は「恋とマシンガン」のド頭の「ダバダバダバダバ」を聴いたことがあるんじゃないかな?(ほらあれTVとかでよく流れるじゃん!)とすら思ってしまいますね。

フリッパーズギターの音楽性はどんなものだったか、そして彼らはどんな影響を日本ポップス史にもたらしたのか。ですが、それを一言で表すキーワードが「渋谷系」です。彼らは渋谷系と呼ばれたスタイル――それは音楽のみではなく、映像やファッション、デザインなど、複数の分野を巻き込んだ"ムーヴメント"でしたが――を、同じ時代に活躍したピチカート・ファイヴなどと共に一般へ膾炙させたアーティストでした(実際には渋谷系というキーワードがあふれ始めたのは彼らの解散後の話なのですが)。音的にはギターポップやマッドチェスターといった海外インディーロックからの強い影響をもとに、元ネタがかなりわかりやすく存在する……というのもかーなーりざっくりですが(ちゃんと知ってる皆様に絶対に怒られたくない!!!)、大体そんな感じです。渋谷系に関しては各バンドによって割と音が違うので、その辺はまあ、いろいろ聴いてください。

そしてこの渋谷系というジャンルのスピリットが色濃く出ているジャンルが、アニメソングや声優さんといった二次元文脈の音楽だったりします。渋谷系は90年代以降に花開いたスタイルですが、ゼロ年代以降に登場したその名も"ネオ渋谷系"のバンドたちであるCymbals(2ndアルバム「Mr.Noone Special」もPrime Musicにあります、必聴)やRound Tableといったバンドたちで活躍していた沖井礼二(TWEEDEES、ex.Cymbals)や北川勝利(Round Table)などの音楽家たちは、花澤香菜さんや竹達彩奈さん、また坂本真綾さんなど様々な声優さんやアニメ作品に楽曲を提供なさったりしています。また、みんな大好きMONACA田中秀和先生はあまりにもそのものズバリなこんな曲を書いてらっしゃったり。

もう笑うしかない。田中秀和渋谷系好きすぎ。というわけで色んな所に影響を及ぼし続けている「CAMERA TALK」、必聴!

 

 COALTAR OF THE DEEPERS「THE BREASTROKE」

まさかこのアルバムがPrime Musicで聴けるとは思いませんでしたね。日本のシューゲイザー四天王として名高い(……のか?ちなみに残りの3組はLuminous Orangecruyff in the bedroom・HARTFIELD、ルミナスとクライフはCOTD同様に一部の作品をPrime Musicで聴くことができます。あの向井秀徳が推薦文を提供したLuminous Orange「luminousorangesuperplastic」は必聴!)彼らですが、近年ではヴォーカル/ギターのNARASAKI大先生による多方面でのご活躍(「アイカツ!」「鬼灯の冷徹」といったTVアニメやももいろクローバーZへの楽曲提供、大槻ケンヂとのバンド・特撮へのギタリストとしての参加、またV系バンドPlastic Treeでのサウンドプロデュースなどなどなど)で本バンドも知られるようになってきたのではないでしょうか。

 

で、本作「THE BREASTROKE」。このアルバムは1998年にリリースされた彼らの最初のベストアルバムであり、その後廃盤となってしまい中古盤の値段が高騰したり(このバンドでは割とよくあることですが)……といった経緯を経て2008年に再発。2019年現在では再発盤も廃盤扱いとなってしまっておりタワーレコードとかでは注文もできなくなっていますが、Amazonには発売元であるMusicmineからのデッドストック放出なのか定価で普通に新品が買えるようになっていますね。これもいつ買えなくなるかわからないので早めの入手をお勧めいたします。

本ベストアルバムには彼らの結成(91年)~1998年までの音源が収められており、94年のアルバム「THE VISITORS FROM DEEPSPACE」や98年のアルバム「Submerge(こちらもPrime Musicで聴けます。名盤!!)、またEPやコンピからなど幅広く選曲されており、再録で生まれ変わった楽曲も入っているなど非常に充実した内容になっています。彼らの「轟音ギター×超絶ドラムス×少年ボイス(実はフリッパーズギターっぽいところもある)という要素がこれでもかと詰まりまくっており、初めてCOTDの音楽に触れるリスナーを容赦なく引きずり込むこと請け合いです。フィジカル盤から一曲削った全12曲なのがちょっぴり残念ですが、そこはやはりまだ手に入りやすい盤の方を早急に手に入れて聴いていただくということで……必聴!

 

toe「the book about my idle plot on a vague anxiety」

出ました名盤!と多くの人が叫んで下さるのではないかと思います。日本のポストロック史に燦然と輝く名盤中の名盤であり、2000年の結成から現在に至るまでその歴史を更新し続けている国内最高峰のインストバンドの一つ・toeの記念すべき1stフルアルバム、それがこの「the book」であります。リリースは2005年、通称「シカ」(こう呼ぶ人見たことないんだけど……)。いやーしかしまさかこのアルバムがPrime Musicで聴けるとは思いませんでしたよ(n文字ぶり2度目)。というか、冒頭で書いた「このアーティスト殆ど聴けるじゃん!」というのが、実はtoeのことだったりします。オリジナルアルバムとEPは文字通り全曲聴くことができますからね……良い時代になったもんですよ全く。

多くのミュージシャンに影響を与えている「the book」ですが、そもそもどんなアルバムなのかというと、先ほどから何度か出てきているポストロックというジャンルを国内に根付かせたアルバムであると断言してしまっていいのではないかと思います。国内ではゼロ年代以降多くのバンドが現れ、残響レコードなどのポストロックを取り扱うレーベルも登場し始めましたが、そのきっかけとして小さくない役割を果たしたのが、toeや後述するdownyのようなバンドたちでした。といっても筆者はリアルタイムで観測していないのでアレですが……

toeはメンバー全員がそれぞれキャリアを積んできた状態で結成され、特にメロディックパンクやハードコアといったかなり激しめの音楽を共通してルーツに持っていました。しかしtoeの音源においては、一聴するとそのようなバックグラウンドはあまり表に出てきていません。彼らはハードコア的なルーツを持ちつつも、あくまでクリーントーンな二本のギターによる有機的な絡み・"間"を強く意識しつつもバンドを支えるベース・そして柏倉隆史による尋常ならざる手数で歌いまくるドラムスで、それまでとは一味違った、まさにtoeならではの音楽性を追求し始めます。この、「ロックでありながらも既存の枠に当てはまらない新しいロック」という感覚こそが、ポストロックの醍醐味でした(これもだいぶざっくりですし、彼らもGhosts And Vodkaなどから強い影響を受けていましたが)。

で、それだけ大きな影響をロックシーンに与えた彼らですから、当然ロックだけではなく多ジャンルにも影響を及ぼしています。直近で話題になったのはやはりこれでしょうかね……

MONACA広川恵一先生作編曲、Wake Up, Girls!の「言葉の結晶」。ギターの絡みもさることながら、ドラムがもう、もろに柏倉さんです……(ちなみに生演奏ではなく広川氏によるプログラミング)。広川氏は別の二次元アイドルコンテンツで残響ド直球(ていうかmudyですよね)なナンバーを書いたこともおありで、オタクスマイルを浮かべてしまうこと請け合いです。オタクはポストロックを聴け。俺もそんな沢山は聴いてないけど。というわけで必聴!!

 

downy「第三作品集『無題』」

toe「the book」が日本のポストロック史に燦然と輝く名盤中の名盤だとするならば(というかそうなのですが)、downyの3rdフルアルバム(彼らのアルバムにはタイトルが存在しないので便宜上上記のように呼称されます)は――downy自体もちろんポストロック史における重要なバンドではあるのですが――少し特異な、名盤とラベリングされるのをストレートには受け入れない、どこかストイックな印象を受けます。名盤であることに変わりはないのですが……だからこそ、ぜひtoe「the book」と並べて聴くことで、この時代のシーンに思いを馳せて頂きたい。そんな想いで選出させて頂きました。

 

downytoeと同じく2000年の結成で、やはり彼らもハードコア的なルーツがありつつもどんどんとその一筋縄ではいかない個性を開花させていったバンドでした。toeがエモーショナルかつ有機的なインストゥルメンタルだとするならば、downyは何もかもが真逆。彼らはヒップホップやエレクトロニカトリップホップなどのループを軸とした音楽の「冷たい美学」を取り込んだ、クールかつストイックなアンサンブルを構築していったのです。ヴォーカル/ギターの青木ロビン氏によるウィスパーな歌唱、惜しくも昨年永眠された青木裕氏のエフェクティブなギター、後藤まりこさんやLuminous Orangeなどでもライヴサポートを務める仲俣和宏氏の質実剛健なベース、そしてスタジオミュージシャンとしても七咲逢(CV:ゆかな)さん「恋はみずいろ」など数々の名曲でドラムスを務めている秋山タカヒコ氏の正確無比なドラミング。ライヴでは5人目のメンバーたる石榴氏のVJも入るなど、音だけではなくヴィジュアル面にも強いこだわりを発揮していました。

そんな彼らのこの3rdアルバムは2003年リリースで、ドラマーの交代により秋山タカヒコ氏が加入して初となる作品だったわけですが、構築的でありながらバンドサウンドであることを強く印象付ける1stや2ndとは対照的に、徹底して抑制されたアンサンブルが全編を通じて貫かれており、彼らのアルバムの中でも最も"静"の面が強調された作品になっています。

ヒップホップ的、ロック的アプローチをけっこうやれたと思います。エレクトロニカをナマでやるみたいな構想はずっとあって、それが秋山君の加入によって出来るようになった。それが3枚目のアルバムなんです。

 と、再発に伴うインタビューで青木ロビン氏は語っていますが、まさにこの通りでしょう。筆者はこのアルバムが再発された2014年、高校三年生でしたがマジで毎日聴いていました。再発の時点で10年経ってましたが、そんなの余裕で越えてくる、あまりにも衝撃的なアルバムでした。是非聴いて頂きたい。

ちなみに、筆者が初めて聴いたdownyの楽曲はアルバムには未収録の「山茶花」というムチャクチャイケてる曲で、この再発盤にはボーナストラックとして収録されているのですがPrimeでは聴けないみたいですね。ちょっぴり残念……ぜひ盤で買って聴いてみてください。カッコいいので。必聴!

 

⑤KID FRESINO「Salve」

Prime Musicは意外とHiphopが聴ける、言い換えるとラインナップが強かったりします。ほかのサブスクリプションサービスを利用したことがありませんので比較してどうこうということではないのですが……それはともかく、このEPを聴くことができるのはだいぶ嬉しいというか、ありがたい気持ちでいっぱいになりますね。その位良い作品です。

KID FRESINOはJJJ、Febb as Young Masonとのクルー・Fla$hBackSでバックDJとしてそのキャリアをスタートし、その後ソロでもラッパーとして活動を開始。愛知は知立出身のラッパーC.O.S.A.とのジョイントアルバム「Somewhere」(こちらもPrime Musicで聴ける名盤!)のリリース、またSTUTSやSeihoといったイケてるプロデューサーとの楽曲制作などで常にシーンをリードし続けています。そんな彼が2017年にリリースしたEPがこの「Salve」なのですが……このEP、凄いんです。何しろ4曲中3曲のトラックがバンド編成。そしてそのバンドメンバーがまた凄い。

三浦淳悟(PETROLZ)、佐藤優介(caméra-stylo)がプロデュースした3曲は、ベース三浦淳悟、ウーリッツアー佐藤優介、ドラム柿沼和成、ギター斎藤拓郎(Yasei Collective)という編成のもと、

 ヤバくないですか???????????なんだこれ。特にウーリッツァーの佐藤優介さんはスカートのライブサポートでもご活躍。この作品でもいい音鳴らしてるんですよね……今作でバンド編成での楽曲制作に手ごたえを感じたのか、その次のフルアルバム「ài qíng」(Prime Musicで聴けます。名盤)ではドラムスにあの石若駿を迎え(最高でした)、そしてライブでは松下マサナオ氏や、さらには……

toe柏倉隆史を従えてクソイケてるヴァースを蹴る始末。このドラムスの人選、オタクの悪い妄想そのもの。凄すぎるよフレシノ。

先ほどもこの後に出たフルアルバム「ài qíng」が名盤である旨は書きましたが、ではなぜ4曲のEPをわざわざ取り上げたのかというと、この柏倉先生の客演(盤では叩いていませんが、どちらにも違った良さがあるため聴き比べてみて頂きたい)という人のつながりを意識したとか単純にめっちゃ良いEPとか、そういうのもあるのですが、一応この「Salve」、数量限定版として出ており最近だんだん手に入らなくなってきています(タワレコにもちょっと前までは普通にあったのにもう店舗の在庫確認できなくなってました)。こういうのが手軽に聴けるのは本当にありがたい……というわけで必聴!

 

tofubeats「FANTASY CLUB」

ここまではかなりバンドサウンドだったり生演奏の作品を挙げてきたので、最後は打ち込み主体の名盤を取り上げたいと思います。近年最も活躍がめざましい……とはいえ既に10年以上のキャリアを誇る神戸出身のトラックメイカー/DJ・tofubeatsによるメジャー3rdフルアルバム。氏のアルバムもメジャーデビュー前の唯一のフルアルバム「LOST DECADE」以外は全作聴けるんですよね。昨年リリースの最新作「RUN」もいつの間にかPrimeで聴けるようになっていて驚きました。そちらも名盤ですので是非聴いていただきたいのですが……今回は私が一番最初にハマったこのアルバムを。

tofubeats氏に関してはこちらの弊ブログ初めての記事でも言及させて頂いてますが、氏はヒップホップや現行のベースミュージック、ハウス/テクノ、J-POPと様々な音楽性をバックボーンに持ち、特にメジャーデビュー後の2枚のアルバムではその中でもJ-POP的な要素が強い印象でした。もちろんどの要素も入ってはいますが、そんな前二作と比べると、この「FANTASY CLUB」はド直球なシカゴハウスや現行のトラップ的な意匠が前面に出ており、またユーミン作詞曲(アレンジは細野晴臣氏と松任谷正隆氏!)によるブレッド&バター「あの頃のまま」を大胆にサンプリングした名曲「BABY」、リリース前から自身のDJでプレイされアンセム化していた「WHAT YOU GOT」など、本人の歌唱による(それまでは特にシングル曲などヴォーカルをフィーチュアリングに任せることの方が多かった)楽曲が格段に増えています。そしてそれらは、今作が持つシリアスさ、何かに直面しているイメージに大きく寄与しています。その辺に関しては、こんなブログを読むよりも本人のインタビューを読んだ方が早いのですが……二つ置いておきましょう。

www.ele-king.net

cotas.jp

この2つの記事を読めばわかりますが、このシリアスさの背景には「ポスト・トゥルース」という言葉、そして最近のインターネットなどが挙げられます。そしてそのシリアスさは次作となる「RUN」でも形を変えて登場しますが、筆者はこの"直面している感じ"が出始めた「FANTASY CLUB」はtofubeats氏にとって大きなターニングポイントであったように感じられるのです。そしておそらく、実際にそうであったのでないか、とも思えます。やっぱり名盤ですね。必聴!

 

……というわけで、久しぶりの音楽紹介系記事、勢いで書き切った全6枚をお届けいたしましたがいかがでしたでしょうか!知っているアルバム知らないアルバム、はたまた全部大好き!などいろいろあるかもしれませんが(「全部大好き」の人はお酒でも飲みに行きましょう笑)、いつも聴いているアルバムでもこういうサービスで聴いてみると違った視点になったりして面白いかもしれません。Prime会員の方はぜひ活用なさってすてきな音楽ライフを!

あ、あと誤字・脱字・情報ミスやリンクミスなどございましたらTwitter(@o_w_t_n)までどうぞ。長々とお読み頂きありがとうございました。お疲れ様でした!

絶対わかる!CDDJ ~CDでのピッチ合わせにおけるCDJモードの活用~

……と、いきなり資格試験によくある参考書のようなタイトルが出てきて「???」となった方も少なくないのではないでしょうか。ご安心ください、情報商材は一切売りません!お久しぶりです、おわたにです。


さて、ここ数年のDJシーンで最も使用されるメディアは間違いなくUSBメモリ(またはSSD/HDD)になるのではないかと思います。というかわたしも殆どUSBです。rekordboxは本当にすごい。とはいえ、USBは読めるのに解析データがCDJに認識されないということ、稀にあったりします。稀にですよ。これはCDJに問題があるパターンとUSBに問題があるパターンの……という犯人捜しはこの際どうでもいいのです。問題は「次の曲をいかにスムースにつなぐことができるか」、それだけ。
この問題を解決してくれるソリューション、実はCDでのDJに答えがあったりします。ごく稀にCDJ-100Sというメチャクチャ古いCDJと手焼きしたCD-RでDJをすることが筆者にはあって、CDでのDJにはBPM表示もグリッドもクオンタイズも勿論SYNCも当たり前のように存在しません(いやある程度の機種にはBPM表示あるけど解析データほどあてにはならないし)。しかし適切な方法を押さえてそれに慣れることができれば、CDでスムースにDJをすることは不可能ではありません。というかokadada大先生なんかも昔は現場にCD持ち込んでたみたいだしね。

実際CDでDJすることができるようになると、先述のようなトラブル対処に強くなるほかにも選曲の瞬発力が上がったり(ピッチ合わせには当然USBの時よりも時間がかかるのでその分選曲を早めに済ませたり二手三手先まで見通す必要性が出てきます)、いきなりホイッと渡されたCDから選曲をする(実際にgekkoさんの家で遊んでて無茶振りされました)ことができるようになるなど、DJとしての基礎体力の強化にものすごく寄与してくれます。特にハウスやテクノはCDでやるハードルがほかのジャンルに比べて低いはずなので一度はやってみるといいと思いますよ。

 

前置きはこのぐらいにして、実際にCDでDJをするための適切な方法は何なのか。なのですが、本稿では選曲をしてから実際に繋ぎ始めるまでのいわゆるピッチ合わせと呼ばれる作業を「CUEを打つ」→「ピッチを合わせる」の2ステップに分け、解説を行っていきたいと思います。

というのも筆者は、CDでのDJで重要なのはピッチを合わせることだけではなく、実はその前段階に当たるCUE打ちも同じぐらい重要なのではないか、と考えているためです。ピッチを合わせたり実際にかけていく際にもCDJではPLAYボタンを押すかCUEボタンを押しっぱなしにしてPLAYを押す、のどちらかをやると思いますが、CUEの位置がガタついていては微調整をしなければ繋ぎ自体がガタついてしまいます(たとえピッチがあっていたとしても、です)。まあジェフミルズなんかは「いったんドタついた状態を聴かせてから徐々に合っていくという過程が重要なんだ」みたいなことを仰っていた気がしますが、それは余裕があるときにやることです(勿論言いたいこと自体はカッコいいしなるほどとも思いますが)。まずは土台をしっかり形成するという意味で、始点をきっちり合わせることは非常に大事なのです。

 

ではCDJでのCUE設定について解説しましょう。まず行うべきは、CDJのモードを(選べるなら、ですが)VINYLではなくCDJにすることです。この二つの違いは何なのかですが、大きく分けて2点あります。一つはジョグを触ったときの挙動、もう一つは曲の再生中にPLAYボタンを押したときの挙動です。
VINYLではジョグの天板を触るとスクラッチ、ふちを触るとピッチの微調整ができますが、CDJモードではどこを触ってもピッチの微調整になります。つまり曲が止まっているときに動かしてもウンともスンともいいません。筆者自身、なんでこのモードが存在するのか最初は意味が解りませんでした。一応ですけどリワインドする人はしたくなったとき絶対にCDJモード選ばないようにしてくださいね。(というかそもそも古い機種はCDJモードのみなのでリワインドできないわけですが……)
二つ目の違いについてですが、VINYLで曲の再生中にPLAYを押すと素直に止まりますが、CDJモードで曲の再生中にPLAYを押すと、「ドッドッドッドッドッドッ」と非常に細かいループを当てたような音が流れます。これをスタッターと言いますが、これがCDJでCUEを打つ最大のポイントです。先ほど「非常に細かいループを当てたような」と書きましたが実はその通りで、"今かかっている場所の近くを一瞬間切り取ってループさせている"のが正確な表現だと思います。
そして、先ほどはピッチの微調整にしか使えなかったジョグがここで本領を発揮してくれます。曲の再生中にPLAYを押して「ドッドッドッドッドッドッ」と言わせたCDJのジョグをグルンと回すと……なんと、切り取る一瞬間の位置が変わるんですね!使えないと思っていたCDJのジョグはこのようにして使うのです。
通常のハウスやテクノでは頭のバスドラムなど特定の楽器が鳴る位置に合わせたいと思いますが、そういう時は「ドッドッドッドッドッドッ」と鳴っている位置より前にポイント(実際はジョグ)を動かし、「ドッドッドッドッドッドッ」が「トットトットトットッ」ぐらいに軽い音になる地点を狙います。さらに「ツッツッツッツッツッツッ」ぐらいまで軽くなれば、おそらく既にちゃんと頭にアジャスト出来ているのではないかと思います。もちろん曲によってどこに合わせるかは違いますのでいろいろな曲で試してみて頂きたいのは当然ですが、このメソッドに沿ってCUEを打てば、頭出しはマスターできたと言って良いのではないでしょうか。

 

さて、ここまでの説明をしっかり理解してCDJモードでのCUE打ちをマスターすることができれば、ピッチ合わせはそう難しくはありません。ピッチ合わせについてはほかのブログ様にも記事があるかもしれませんが、基本的には今かかっている楽曲に合わせて次の曲を再生してみて(この時ちゃんとCUEが頭に打たれていないと始点の縦が合わないためより面倒になる)、ジョグを時計回り(ちょっとうろ覚えなので違ったらすみません。今かかっている曲に対して早すぎるならば、の意味です)に回転させる必要があればピッチフェーダーを少し上げ、また反時計回り(先の括弧と同じくです)に回転させる必要があればピッチフェーダーを下げる、というのを繰り返し、ピッチを可能な限り追い込む。それだけです。まあ四つ打ちならばあまり大幅に変化する選曲はなされないでしょうが、練習の時はある程度BPMが頭に入っている曲同士でつないでみるとあまり難しくなくていいのではないでしょうか。

 

実際に練習してみるとわかりますが、ピッチ合わせを厳密に追い込み切れないまま次の曲を送り込まねばならないタイミングがおそらく出てくることかと思います。出てこなければよっぽど同じぐらいのBPMでやってるかよっぽどマスターしたかのどちらかです、どっちにせよよかったですね。もしもピッチが微妙にずれたまま次の曲をかけるならば、ジョグで微調整をかけながらつなぐというのが必要になりますがそれも立派な技術。少しずれた程度では慌てない度胸と冷静さもDJには大切です。

 

というわけでさらなる利点が見つけられたところで雑ですが解説を終えたいと思います。ピッチ合わせよりもCUE打ちの方に紙幅を割きすぎかもしれませんが……わからないことがあればツイッター(o_w_t_n)までどうぞ。お疲れさまでした!

DJのためのキー・BPMデータベースやってみることにしました

気付いたらキーの記事書いてから四ヶ月も経ってた。早いねえ。おわたにです。

さて、今日突然降ってきたアイデア、DJ向けのキー・BPMデータベース。Googleスプレッドシート辺りを使えば簡易的にでも形にできそうだな~と思って、取り急ぎ形にしてみようという気になりましたのでやってみることにしました。

 

きっかけは先日遊びに行った某パーティー、のあとのTwitterでした。ゲストで回してらっしゃった方がその日のセットリストを上げてらっしゃったのですが、曲名の前に「[(キー)/(BPM)](曲名)」みたいな感じでキーとBPMが併記されてたんですよね。これうまいなあってわたくしだいぶ感心してしまったんですけど(クソ上から目線!)、その中のわたしも知ってた曲のキーが違ったんですよね。rekordboxのキー解析は割と甘くて、こういうことが結構起こりがちになる。そんな時自分の耳でキーを判別できるように前に記事を書いてはいたんですけど、まあ非効率っちゃ非効率だし、何なら誰でも編集できるデータベース、あったら面白いんじゃね?って突発的に思いついた訳です。今日の昼間に。先日っつっても二ヶ月ぐらい前の話なのでなんで今日思いついたんだろ?って我ながら不思議なんですけど、せっかくなので冷めないうちに形にしてみることにしました。

似たようなのもあることはあるんだけど、アナログのみっぽいので…… 

clubberia.com

 

というわけで作ってみました。死ぬほどシンプルなので(主にわたしのエクセルのスキルがないため)、ここをこうしたい!みたいなのがある人はガンガンいじってください。宜しくお願いします。

docs.google.com

 

 

DJのための音楽理論 第3回「調について」

皆様、ついにこの話題に触れる時がやってまいりました!どうもおわたにです。DJのための音楽理論、第3回は「調」について。いやーやっとここまで来ましたね。。今まで音や音程について見てきましたが、今回はそれらを活用しつつ楽曲のムードを成す最大の要因の一つである調――キーと言ったほうが馴染み深いかも知れませんが――について解説していきます。

 

しかし、実は調について解説する前に知っておかなければならないことがあります。それは「音階」についてです。今回のテーマである調は、実は楽典では「音階」の章の一部に当たる部分で、それ単体で章が書かれているわけではありません。しかしDJにとっては調は非常に重要です。なので今回のメインテーマは調ですが、その前段階たる音階についてもきっちり触れて参ります。

もはや張る必要もないかもしれませんが、鍵盤楽器がお手元にない方向けにブラウザ上で音を出せるピアノのリンクを。実際に音を出して読むのを推奨します。

life.a.la9.jp

 

 さて、まず音階とはいったい何なのか。

音階とは、ある音をスタートポイント(これを主音と呼びます)として、1オクターブ上の同じ音に達するまで、特定の秩序にしたがって音を並べたものです。

 前回の音程の話で、ある音とその1オクターブ上の音は何度になったか、覚えていますでしょうか?そう、完全8度でしたね。よって、スタートポイントとなる音―主音とその1オクターブ上の音までは8個の音が存在するはずです。しかしその中には、完全系の音程と長短系の音程が存在し、長短系の場合2つの音程が存在しました。その長短どちらの音を用いるかで音階は変わってきますし、そもそも音を抜いた、つまり8個音がない音階も存在するのですが……今回は最も重要な、長音階短音階の2つを解説します。

 

長音階は簡単です。Cを主音とするなら、C・D・E・F・G・A・B・C、つまり鍵盤の白鍵をそのままなぞるだけ。この音階の各音同士は、下から長2度(CD間)・長2度(DE間)・短2度(EF間)・長2度(FG間)・長2度(GA間)・長2度(AB間)・短2度(BC間)となるように並んでおり、一番下を決めてこの関係に沿って音を並べれば長音階の出来上がりです。

では、試しにGを主音として長音階を作ってみましょうか。最初の音はG、次は長2度なのでA、次も長2度なのでB、次は短2度なのでC、次は長2度なのでD、次も長2度なのでE、次も長2度なのでF#、最後は短2度なのでG。あら簡単。鍵盤を活用しつつ好きな音で長音階を作ってみたりしましょう。

 

前回「長」は明るいイメージを指すと書きましたが、長音階を聞いていても、やはり明るいイメージを感じ取ることが出来るのではないかと思います。逆に、短音階はやはりどこか物悲しげです。

短音階の場合、Cを主音とするなら、C・D・E♭・F・G・A♭・B♭・C、となり、長音階の時と比べてE・A・Bに♭がついて半音下がっています。これでそれぞれ長3度・長6度・長7度だったものが短3度・6度・7度になっていることが分かるでしょう。この音階の各音同士は、下から長2度(CD間)・短2度(DE♭間)・長2度(E♭F間)・長2度(FG間)・短2度(GA♭間)・長2度(A♭B♭間)・長2度(B♭C間)となっており、やはり長音階の時とは様相が異なっています。こちらでは別の主音で配列することはしませんが、是非ご自身でもやってみてください。

(ちなみに、短音階の場合はその中にも種類があって、上で示した短音階は最も基本的な「自然的短音階」と呼ばれるものです。作曲などで音階が用いられる場合、主音の短2度下に必ず導音と呼ばれる音を音階の中に置かなければならない(長音階の場合長7度の音が導音として機能します)のですが、自然的短音階には導音はありません。上記で言うB♭は短7度であり、Cとの音程は長2度だからです。そこで、短音階における導音を設置するためのソリューションとして、「和声的短音階」「旋律的短音階」といった短音階が存在します。和声的短音階の場合、(以下、Cを主音とした場合で書きますが)EとAに♭が付いていて、Bはそのままです。弾いてもらえるとわかると思うのですが、この場合A♭とBがかけ離れている(この2つは半音3つ分違う増2度という音程です)ように感じられます。そこでさらにA♭からも♭を取り除き、増2度をなくしたのが旋律的短音階です。ここでは♭が付いている音はEのみで、それ以外は長音階と何ら変わりがありません。ここから、長短の性質を決定づけるのは実は第3音(Cを主音とするならE)であることがわかります。)

 

……さて、音階の話はこんな感じですか。すでに2000文字近くも書いていますが、今回の本番はここから。調のお話です。

 

調とは、楽曲の根底にどの音があり、その楽曲が明るいか明るくないかを示す表示です。長音階短音階が特定の音を主音として成り立っているとき、そこには特定の調ができる、といいます。つまり主音は音階の根底にある重要な音であり、主音の音名と音階の名称が組み合わされて、調の名称=調名とされるわけですね。そして、長音階の調は長調(Major)、短音階の調は短調(minor)と名付けられます。

例えばDを主音とする長音階の調はD-Major、簡略化してD。短音階の調ならばD-minor、こちらを簡略化するとDmとなります。DJソフトでは簡略化した書き方の方を多用しますので、書き方を覚えておきましょう。

 

長調短調が各音にあり、更に第1回より音は12個あることから、調の個数は基本的に24個です。そしてその中で、前回解説した音程のように関係性を持つ調同士というのが存在します。ある調に対して特別な関係性を持つ調のことをその調の近親調と呼び、その関係性には「同主調」「平行調」「属調」「下属調」の4つがあります。この4つの調と主調同士は相性が良く、mashupやDJにおいて用いることが出来る重要な知識なんですね。では、それぞれを簡単に見て行きましょう。

 

同主調は、なんとなく見て察しが付く方もいらっしゃるかもしれませんが主音が同じ長調短調の組み合わせを指します。例えばDとDm、GとGmとか。mashupだとhugkissさんがたまにこの組み合わせを用いています。mashupで同主調を用いるのは結構珍しいかも。

続いて平行調。これは音階で用いられる7つの音が全て同じな長調短調の組み合わせです。この長調短調の主音同士は短3度違っていて(長調の方が高い)、例えばFとDm、E♭とCmなどがこれにあたります。実際にこれらの音階を弾くと出てくる音が同じなのが分かると思いますが、平行調の曲同士でつないだりmashupを制作すると綺麗に合います。

次は属調についてです。ある調の属音(音階における5つ目の音のことです)を主音とする調のうち、元の調が長調であれば長調短調であれば短調を、主調に対する属調と呼びます。例えばCmの属調Gm、Dの属調はA、といった感じ。前の2つは調同士の組み合わせですが、属調は任意の調に対応して決まります。

最後は下属調。さっきが属音だとすればこちらは下属音(音階における4つ目の音のことです。主音に対して5つ下の音なので"下"属音なのです)を主音とする、元の調と同じ長短の調を主調に対する下属調と呼びます。例えばGの下属調はC、Fmの下属調はB♭mという風に。以上4つ、是非弾きながら確認してみてください。

 

これらの近親調を選曲段階で活かしていくと、よりスムースに曲をつないでいくことが可能になります。筆者はまだまだなので頑張ります……

で、その関係を非常にわかりやすく示しているのが「五度圏」という図です。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/3/33/Circle_of_fifths_deluxe_4.svg/600px-Circle_of_fifths_deluxe_4.svg.png

横同士のつながりは属調/下属調、縦は平行調ですね。なんと見やすいことか。図はWikipedia上に掲載されていたJust plain Bill氏のものをお借りしました。

基本的には今かけている曲のキーから別の曲に繋ぐ際、このキャメロットサークルの上下左右隣のキーの楽曲(勿論同じキーの楽曲でも)を選曲すると、より2曲が繋がって聴こえやすい。というのが今回のお話でした。しかしそのためには、自分が今どのキーの曲をかけているのかがわかっていなくてはなりません。そしてその近くにはどんなキーがあって、それに当てはまる曲は手持ちにあるのか。そんなことも頭に入っている必要があります。こればっかりは意識して聴いていくしかありません。DJソフトのキー解析もあることにはあるのですが、それも正確とは限りません(そんな時に自分の耳で聴いて修正できるように、この解説を書いてきたという面もあります)。とにかく聴いていくことです。そのために、これまで音についてや音程について、音階や調についてを学んできたわけですからね。

 

とまあ、「調について」はこんなところでしょうか。少し投げっぱなしな感も否めませんが、ここまでなるべく平易な言葉で材料を用意したつもりです。あとはどれだけそれを自分の耳に定着させていけるかだと思います。勿論この記述に不足がないのかと言うとそんなことは全くないと思いますし、分かり辛い部分、伝わり辛い部分もあるでしょう。皆様からのご質問お待ちしております。